高齢化と核家族化が加速する現代では、自分の死後についての後始末を自分自身で行うために、いわゆる「終活」をする人や、財産や持ち物を整理する生前整理をする人が増えています。
生前整理をするのは、その多くが、自分の死後に遺った遺族が、財産や物の処理に困らないように、また、経済的な負担を負わないために行われますが、具体的にはどのようなことを行うのでしょうか。
また、どんなメリットがあるのでしょう。
具体的にご紹介します。
生前整理とは?遺品整理との違いについて
生前整理という言葉は、終活という言葉や概念が一般化してきた流れに合わせ、ごく普通に使われるようになりました。
2013年には、「一般社団法人生前整理普及協会」も設立され、生前整理の専門家や、それを担う業者などが急増しています。
生前整理はよく、遺品整理という言葉と混同されがちですが、前者は本人が生前に行うのに対し、後者は遺族が本人の死後に行うものです。
また、最近では老前整理という造語も出てきており、その違いは以下のように分類できます。
- 生前整理
- 老前整理
- 遺品整理
本人が、家族や親族などの遺族のために、主に財産や相続トラブルを避けるために生前に行う整理
本人が、自分のために、年を取る前に、今や未来を良くするために、物や暮らしをシンプルにすること
遺族が、亡くなった故人の遺品を整理する行為
生前整理のメリット
本人が、生きているうちに、遺族のために行う生前整理のメリットには、以下のようなものが挙げられます。
1.相続関係を整理できる
生前整理の本来の意味が、特に財産や相続のトラブルを遺族に残さないために行うものなので、生前整理で、財産目録を作ったり相続関係を整理したりすることで、相続関係の一切を整理できることが大きなメリットです。
これらを元に、エンディングノートや遺言書を作成し、それぞれの財産を誰にいくら分与するか、またはその理由などを記しておきます。特に遺言書は、公正証書遺言書にしておくと、相続人による破棄や書き換えのリスクも回避でき、手続きも簡単になります。
こうすることで自分の意志が明確になり、自分の死後の家族間トラブルや争いを回避することができます。
2.残りの人生でやりたいことを明確にできる
生前整理を何歳から始めるかによっても異なりますが、残った人生で何をやりたいか、また何ができるかを整理しておくことは、自分らしい人生を送るためにも、とても有意義なことと言えます。
日本では75歳以上が後期高齢者とされており、体力や認知機能などが急速に低下すると言われています。
また、健康志向により体に気を使った生活を送っている人も多いですが、癌や脳梗塞などを突然発症することもあり、少しでも早くから生前整理をしておくことが、心の準備にもつながります。
若い頃にやりたかったけれど断念していたことや、しばらく忘れていた夢など、好きなことを楽しむ人は、高齢になっても元気で素敵な生き方をしています。
思い立った時に、こうした「残りの人生の楽しみ」を整理して、できるものはすぐに始めるのも良いでしょう。
3.相続放棄をするか否かを早めに判断できる
自分が残す財産だけではなく、自分が相続しそうな財産を放棄したり、すでに引き継いだ不動産などを一気に処分して現金化したりすることで、これも、自分の死後のトラブルを避けることにつながります。
なるべく残さない、残すなら行き先をはっきりさせることが大切です。
4.遺品整理の負担を軽くできる
財産だけではなく、今ある物などをなるべく処分しておくと、死後の遺族の負担を軽減できます。
長く生きていると不要な物まで残っていることも多く、生前整理を機会に、不要品や、今後使いそうにない物などは処分して、断捨離を心がけます。
生前整理で行う4つのこと
生前整理を実際に行うには、以下の4つのカテゴリーの整理、準備を行います。
生活雑貨や家具などの物
- 生活雑貨
- 衣料品
- 家具
- 思い出の写真など
- データの処理
長く暮らすことにより、増えてしまった家電やキッチン雑貨、日用品などの小物類などは、1つの機能に1つの物で対応するようにして、それ以外の不要な物は処分します。
好きなデザインや色などの好みで残すのも良いでしょう。
1年に1回以上着ない物は処分するようにします。最近はメルカリなどですぐに売れる場合も多いため、こうしたフリマアプリなども活用します。
大型家具など移動が難しい物を除き、家族構成が変わったことで必要がなくなったベッドやタンスなどは、リサイクルショップなどで処分します。
写真などはデータ化して保存するほか、アルバムで整理していない物はアルバムに貼るなどで、物量を減らします。
パソコンやスマホなどにある、人に見られたくないデータや、FacebookやTwitterなど、会員登録してあるSNSなどの死後の処理は、本人だけが知るパスワードなどでロックされている場合、残された遺族では処分できないものです。
こうしたデータ等の処分方法は、エンディングノートに記しておくなど、生前整理をしておきます。
家族に頼みたくない場合は、弁護士や司法書士などに依頼して処分する方法もあります。
土地や家などの資産
持ち家は、子どもなどが引き継いで住む場合はさほど問題にはなりませんが、遺す人がいない場合は、死後にどう処分するかを決めておく必要があります。
最近は、まだ動けるうちに自宅を処分して、介護サービス付きの施設等に引っ越すケースも多くなっています。
遺族が困らないように、土地や家をどうするかを決めておくのも、生前整理でやるべきことのひとつです。
預貯金通帳などをまとめる
預貯金通帳などは1か所にまとめ、できれば金庫のような所に保管するようにします。通帳だけではなく、家の権利書やその他契約書など、大切なものを1か所にまとめ、「財産目録」を作っておくことをお勧めします。
財産目録を作ることにより、遺族が財産をひとつひとつ調査することなく、簡単に把握することができ、また、相続をする場合、一覧によって、どの程度の相続税がかかるかなどをざっと計算することも可能となります。
葬儀やお墓などの相談
生きているうちに、自分の葬儀のあり方やお墓などについて決めておくのも生前整理の1つです。
自分の遺骨をどこに納めて欲しいか、葬儀は家族葬にするのか、一般葬にするのか、誰を呼んでどのくらいの予算でやるかなど、事前に自分の希望をエンディングノートなどにまとめておくと、遺族の負担を軽減することができます。
最近では、生前にお墓や葬儀代を支払うことができるシステムもあり、また、死後に葬儀代を補填できる葬儀保険などもあることから、こうしたものを生きているうちに利用するのも良いでしょう。
生前整理はいつからやればいいの?
生前整理をするタイミングに決まりはありませんが、やはり、気力も体力も充実している若い頃から始めることをお勧めします。
定年になった時や、子どもがすべて独り立ちをして夫婦だけの生活になった時など、自分のライフスタイルや家族構成が変わった時などが多いようですが、そうした節目でなくても、思い立った時に少しずつ進めていくのも、良い方法でしょう。
20~30代の若い頃は、生前整理など考えられないと思いますが、最近は未曽有の被害をもたらす天変地異が多く、死を身近に感じることも少なくありません。
生前整理は、何歳だから始めなくてはならないなど妥当な時期は無く、「本人が思い立った時」が最適なスタートの時期と言えそうです。
生前整理のやり方
では実際に、生前整理はどのようにすすめるべきでしょうか。
生前整理の方法には、本人と家族で行う場合、業者に依頼する場合、司法書士や弁護士に頼む場合などがあります。
処分する人のライフスタイルや、処分する対象によって、適切な方法を選ぶようにしましょう。
本人もしくは家族でやる場合
普通の断捨離では、捨てるものと残すものを決めて行いますが、捨てられない物などが多くなりがちで、総じてダイナミックな処分ができないものです。
そのため、生前整理を行う場合は、最低限残す物だけを選んで、後は全部捨てる覚悟で挑みます。
本人の思いや感情が揺らいでどうしても捨てられない物は、思い切って家族など第三者に判断してもらうようにします。
捨てる物は、リサイクルショップに回収してもらったり、フリマアプリなどに出品したりなどで処分します。
生前整理業者に頼むことも視野に入れる
生前整理には、プロの専門家が所属する業者もあり、処分する物が多い場合などには、こうした業者を利用するのも良いでしょう。
中には一般社団法人生前整理普及協会が認める有資格者もおり、依頼人の思いや意図を汲んで、責任をもって的確に作業を進めてくれます。
独り身の場合は司法書士や弁護士にも相談する
最近急増しているおひとり様など、自分の死後の処理などを頼める人が周りにいない場合などは、司法書士や弁護士に相談して、死後事務委任契約を結んでおきます。
死後事務委任契約とは、役所への届出や、住居処分、遺品整理、葬儀や埋葬の手続き、電話や電気・ガスなどのサービスの解約などを、本人に代わって手続きをしてもらう契約です。
身寄りがない場合は、生前整理として、こうした死後事務委任契約も、選択肢に入れておくことをお勧めします。
生前整理の注意点やトラブル
生前整理は、以下の点に注意して進めます。
生前整理はまとめてやろうとしないようにする
生前整理にやることを4つご紹介しましたが、一気にまとめて短期間でやるのは難しく、じっくりと考えながら、時間をかけて行うようにします。
急いでやってしまい、捨ててしまってから後悔したり、財産を分けてしまった後で気持ちが変わったりなども良く聞くことです。
自分が納得のいく、後悔の無い生前整理をするためにも、焦らず丁寧に進めましょう。
悪質な業者に依頼しないように複数の業者に見積もりを行う
めったに無いことですが、不用品の処分を頼んだ業者が帰った後に、貴重品が無くなったとか、終わった後から追加料金を請求されることなどもあり、こうした悪徳業者に依頼しないように気を付けます。
中には作業風景をWebカメラで確認できる業者もあるので、心配な場合は、そういう業者を選ぶようにします。
また、複数の業者から見積もりを取って比較をするようにしましょう。
さいごに
生前整理は、いつから始めなくてはならないとか、いつまでにやらなければならないなどの決まりはないので、自分のペースや、処分する内容・物量によって期間を決め、焦らず丁寧に進めると後悔も少なくなります。
自分や家族だけで処理しようとはせずに、生前整理の専門家や、弁護士・司法書士のような法のプロも活用して、納得のいく生前整理をするように心がけましょう。
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