ここ最近「家族葬」という言葉を良く見聞きすることが多くなったと思いますが、家族葬について詳しくご存知ですか?
実は、家族葬がお葬式の代名詞になるほどに社会に普及してきています。
そもそも葬儀の種類は、家族・親戚のほか職場の仲間や近隣住人、故人が生前お世話になった方などにも参列いただく「一般葬」のほかに、家族や近親者などごく親しい人だけが集まって行う「家族葬」、通夜・告別式を1日で行う「一日葬」、通夜・告別式を行わず火葬のみを行う「直葬」などがあります。
最近は少子高齢化・核家族化などが進み、身寄りや知人が少ない高齢者が増え、また儀礼的な事は無しに気を遣わずに送りたいとする人が増えた事から、簡略化したスタイルの家族葬や一日葬、直葬などが増えています。
その中でも良く見聞きする家族葬は、どういう内容や流れで行われ、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょう。
ここにまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
家族葬とはどのような葬儀なの?
家族葬とは、葬儀の参列者を家族や親族だけに限定した葬儀スタイルを指します。
とはいうものの、参列者の線引きは葬儀1件1件でそれぞれ異なり、「親族ではないけれども親しくしていたあの人だけはお招きしたい」「今後の付き合いもあるからご近所だけには声をかける」などというのはよく見られる光景です。
必ずしも家族や親族だけを招くとは限らず、その家の事情により、参列される方のケースは実に様々です。
たとえば、厳密に核家族だけ、つまり親と子の数人だけというものもあれば、親族だけで4~50人を超える規模のものもあります。
ですから、もっと大きな意味で括るなら、小規模の葬儀を総称して、「家族葬」と理解するべきでしょう。
家族葬が好まれる理由
近しい者だけで行うため、一般葬よりも費用を抑えることができ、外部の参列者がいないので儀礼的な儀式を省くことができ、参列者対応等の負担も軽減されます。
遺族のみでゆっくりと故人とのお別れの時間を過ごしたい、他人への気遣い等を減らしたいなどと考える遺族にぴったりの葬儀スタイルです。
- 家族や近親者のみながら、一般的な葬儀を行いたい
- 儀礼的な事を省き、家族、近親者のみでゆっくりと見送りたい
- 通夜・告別式もしっかりと行うが、費用を抑えたい
- 故人の遺志で家族葬を選んだ
家族葬は、このような方々に選ばれています。
家族葬が選ばれていった時代的背景
元来、お葬式には家族や親族だけでなく、故人が生前に付き合いのあった方々にも参列いただくのが通例でした。
戦後復興を経て高度成長を成し遂げたあたりから、故人の弔いよりも、祭壇の大きさや、豪華なもてなしなどが競われる、いわゆる「接待葬儀」が主流となりました。
しかし、形式ばかりが肥大化する傾向に違和感を持つ人が増え、さらにバブルが崩壊して安価な葬儀が求められていく中で、家族葬は支持されていきました。
さらには、核家族化や地域のつながりの希薄化などもその要因と考えられます。
家族葬の費用や相場はどのくらい?
家族葬の費用は少人数であるため一般葬よりも抑えられますが、祭壇やお棺の選択肢が多く、どれを選ぶかによって費用は大きく変わります。
オプションをつけすぎると一般葬と変わらない価格になることもあります。
一般的に30万円台~のセットプランを用意している葬儀社が多く、このあたりを最低ラインとして、あとは、人数や祭壇やお棺のランク、演出の追加などにより、金額が変動します。
なお、東京都の家族葬の平均値は、113.2万円となっています。
主なセットプランには、おおよそ下記の要素が含まれています。
- 搬送用寝台車
- 安置(枕飾り一式/ドライアイス/線香・ローソク)
- 打ち合わせ
- 納棺の儀式
- 遺影写真
- 通夜・告別式
- 会葬礼状
など
※飲食・返礼品・演出等は別途が多い。
※おもてなし費用(食事、返礼品)は2,000~5,000円✕人数、寺院の費用は、16万円前後(葬儀社に依頼した場合)かかります。
一般葬よりも費用を抑えられそうですが、参列者が少ない分香典も少なく、実質負担が多くなる可能性もあります。
費用を抑えたい場合は、家族のみなので飲食費を削る、ないしは、祭壇・お棺を極力シンプルなものに抑えることを考えましょう。
家族葬でかかる費用の内訳
葬儀の費用は大きく「施設使用料」「葬儀実施費用」「参列者へのおもてなし費用」「宗教者へのお礼」の4つに分けられ、それらの合計で葬儀費用が決まります。
家族葬の場合は、下記の費用がかかります。
- 施設使用料
- 葬儀実施費用
- 参列者へのおもてなし費用
- 宗教者へのお礼
家族葬の場合、参列者が少人数なので小さな会場でも対応可能で、一般葬よりも費用を抑えることができます。
ただし、控え室や待合室などの使用料はかかります。
お通夜・告別式にかかる葬儀費用は、どのような葬儀を行うかによって金額が異なります。
特に大きく影響するのが祭壇とお棺で、選ぶものによってシンプルに低金額で済むものもあれば、お金をかけてゴージャスに行う事もできます。
故人の遺志や遺族の思いで決めましょう。
おもてなし費用とは、会葬礼状、返礼品、そして飲食接待費等が含まれますが、参列者の数が一般葬に比べると少ないため、そのぶん費用を抑えられます。
飲食費は、親族・近親者だけならば、葬儀会場では無く外食することもでき、葬儀社への支払いからその分を除くことも可能です。
仏式の場合、読経をしてもらい戒名を授かったことへの謝礼として、僧侶に「お布施」を渡します。
神式では「ご神饌料」、キリスト教式では「献金」となります。
これらが「宗教者へのお礼」です。
宗教者へのお礼も、葬儀社の担当者に渡す心づけも、あくまでも謝礼なので、金額に決まりはなく、基本的には個人次第といえます。
そのため、家族葬という少人数の葬儀であっても、宗教者へのお礼や心づけは、一般葬と変わりはありません。
家族葬の流れ
ご逝去から葬儀までは主に以下のように進みます。
家族葬は少人数で行う点のみ異なりますが、実際に執り行う儀式などは、一般葬と変わりがありません。
- ご逝去
- 病院で死亡の場合は医師から死亡診断書を頂きます。
- 警察で検視の場合は医師から死体検案書を頂きます。
- 搬送~安置
- 所定の手続きが済むと、ご遺体をすぐに搬送しなければなりません。早めに葬儀社に連絡しましょう。
- ご安置場所(ご自宅か、斎場などの霊安室か)をあらかじめ決めておきましょう。
- 安置先では枕飾りを設置します。
- 故人にはドライアイスの手当をします。
- 打合せ
- 日程と場所を決めます。寺院、斎場、火葬場の予定を調整しながら決めます。
- 親族や、参列したい人に訃報を流します。
- 葬儀プランや見積もりの打ち合わせをします。
- 納棺
- 通夜(通夜式)
- 開式、導師入場
- 読経
- 喪主焼香
- 親族焼香
- 会葬者焼香
- 導師退場、閉式
- 通夜ぶるまい(食事の席に進みます)
- 解散、あるいは宿泊
- 葬儀・告別式
- 開式、導師入場
- 読経
- 喪主焼香
- 親族焼香
- 会葬者焼香
- 導師退場、閉式
- 弔辞弔電の拝読
- お花入れの儀
- 喪主挨拶
- 閉式、出棺
- 火葬・初七日法要
- 火葬場到着
- 炉前法要
- 火葬
- 待合
- 拾骨
- 斎場に戻る
- 初七日法要(葬儀当日に執り行う事が多くなっています)
- 精進落とし(食事の席です)
故人を棺の中に納めます。
自宅でする場合斎場でする場合などケースは様々です。
納棺師や湯灌師を依頼して儀式として執り行うこともあります。
通夜式の進行は地域によってさまざまです。
以下は一般的な通夜(通夜式)の流れになります。
葬儀・告別式の進行も地域によってさまざまです。
以下は一般的な葬儀・告別式の流れになります。
上にまとめた一連の流れはあくまでも一例です。
家族葬の場合は対外的な配慮の必要がないので、省略されるものもあります。
葬儀社に相談しながら進めていくのがよいでしょう。
家族葬のメリットとデメリット・注意するポイント
それでは家族葬のメリットとデメリット・注意するポイントをまとめてみます。
家族葬は身内のみで行うので、気遣い無くゆっくりと故人を送ることができ、費用を抑えることができるのも大きなメリットです。
一方で、一般葬と異なり、日頃から故人と親交のあった方などを呼ばないため、葬儀後に弔問客が増えその対応に追われたり、周囲から不満を言われたりする可能性もあります。
家族葬のメリット
- 参列者への対応に追われることがなく、気遣いが無くて済む。
- 身内だけでゆっくりと故人を偲ぶ時間がとれる。
- 家族や親族が主体の葬儀なので、周りの目を気にすることなく自分たちの望むスタイルで葬儀をすることができる。
- 葬儀に参列する人数をあらかじめ把握しやすい。
- 料理や返礼品などといったおもてなし費用を軽減することができる。
- 華美にしなければ費用を抑えることができる。
家族葬のデメリット
- 故人と縁のあった人とのお別れの場を制限することになる。
- 周囲の理解が得られない可能性がある。
- 後日、自宅への弔問があり、対応に追われてしまう。
- 「どうして伝えてくれなかったのか」とあとから苦言を呈されることもある。
- 参列者による香典収入がないために、結果として葬儀費用が高くついてしまうこともある。
家族葬の注意するポイント
葬儀を家族葬とすると、葬儀後に弔問客がたくさん来られて、その対応に追われることが多いようです。
家族葬を選ぶ時に注意するポイントは、次の通りです。
- 参列者(家族・身内)は誰を呼ぶか
- 訃報をどこまで知らせるか
- 香典・供物は受け取るか、辞退するか
参列は身内のみと決めた場合、訃報を知って参列を希望する方にお断りをしなくてはならないため、お断りの文章を用意し、香典・供物・弔電を辞退する場合は、その旨もしっかりと記載します。
また、どうしても弔問に来たいという方のために、後日お別れ会を開くとか、四十九日法要に出席いただくなど、別の場を設けて対応することなども考えておきましょう。
参列や弔問を希望する方は、故人ときちんとお別れしたいと思ってくださる方々なので、失礼にあたらないように、くわえて、遺族側も後悔の無い家族葬を行うためにも、このあたりをしっかりと準備しておきましょう。
葬儀はそもそも家族が主体であるべきです。
しかし同時に、参列者にも弔いの権利はあります。
家族葬で良いのかどうかを今一度家族や親族と話し合ってみるのもよいかもしれません。
さいごに
家族葬は一般葬に比べ、参列人数が少ない分、余計な気遣いをせずにゆっくりと故人を見送る事ができ、費用も抑えられることから、最近増えている葬儀のスタイルです。
一方で、故人と親交のあった友人・知人が多い場合、葬儀後に弔問に訪れることも多く、その対応に追われる可能性もあります。
こうした参列・弔問希望者の気持ちを汲んで、失礼にならない対応をするためにも、丁寧なお断りの文書を用意して送付ないしは連絡をするなどの対応を行います。
場合によっては、葬儀後にお別れの会を設けたり、四十九日の法要に出席いただいたりなどの対応も考えます。
いずれにしろ、遺族も後悔しないためにも、日頃からこうした葬儀のあり方や葬儀社選びについて考えておくようにしましょう。
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